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研究会情報など

Research

 【2021年度後半~2022年度研究活動計画】

​テーマ:日本統治下朝鮮から考える

 〈戦争と萬葉集〉というテーマにとって、最も重要な問題の一つは、日本統治下朝鮮における『萬葉集』の受容である。韓国・朝鮮研究者の田中明(1926~2010)は、京城の中学で学んだ。そのときの同級生H(日本人)が、京城高等商業に進学し、戦後、韓国人の金氏とともに京城高商の同窓会の幹事を務めることになった。田中・H・金氏らの酒食の会の二次会で、突然金氏が立ち上がって、「海ゆかば」と歌い始めたという。田中もいつか懸命に歌っていた。日本のマスコミでは、反韓・親北朝鮮の論調が主流であった1970年半ばのこと。金氏はいわゆる親日派ではなかった。この経験を、田中は「歴史の一時期を共に生きた者同士が、政治などでは汲み上げることのできない胸底にあるものを、こんな機会にでも交信し合ったのではなかった」と受け止めた(「海ゆかば(冬扇閑話23)」「現代コリア」第463号、2006・6)。

 『萬葉集』を典拠とする「海ゆかば」は、日本統治下の「朝鮮」の人々の感情の深い部分にまで影響を及ぼしていた。このことを私たちはどのように受け止めればよいのか。日本と韓国・朝鮮それぞれの歴史的検討を通じて、双方向的にこの問題を考えたい。

 (1)研究発表(テーマに関わらなくてもよい)[基本的に土曜日]

 (2)レクチャー:開催するか否かも含めて未定

 (3)読書会

  テキスト:趙景達「植民地朝鮮における勤倹思想の展開と民衆」(宮嶋博史、金容徳編『近代交流史と相互認識Ⅱ 日帝支配期』

  (日韓共同研究叢書12、慶應義塾大学出版会、2005))

 【参考となる文献】

  ・趙景達『近代朝鮮と日本』(岩波新書、岩波書店、2012)

  ・趙景達『植民地朝鮮と日本』(岩波新書、岩波書店、2013)

  ・南富鎭『近代日本と朝鮮人像の形成』(遊学叢書28、勉誠出版、2002)

  ・マーク・カプリオ『植民地朝鮮における日本の同化政策 1910~1945年』(福井昌子訳、クオン人文・社会シリーズ、クオン、2019)

​*研究発表会などの研究会活動は、2022年10月までとする。

2021・2022

【2020年度および2021年度前半の研究活動計画】
 
テーマ:〈中国〉からのまなざし
 日中戦争(太平洋戦争下も含め)、および日中戦争下の日本の知識人を捉えるためのスタンスを明確にするために、〈中国〉(=多様な中国)からどのように戦争が見えていたかを学ぶ。戦争を双方向的に捉え直す。​

(1)研究発表(テーマに関わらなくてもよい)[2020年度から基本的に土曜日]
(2)レクチャー
・石原深予氏「前川佐美雄と「日本歌人」」(2020年12月26日(土))〔2019年度のテーマに関わる〕
(3)読書会
①劉文兵『中国抗日映画・ドラマの世界』(祥伝社新書、2013)
②エズラ・F・ヴォーゲル『日中関係史』(日経新聞出版社、2019)
③エズラ・F・ヴォーゲル、平野健一郎編『日中戦争期中国の社会と文化』(慶應義塾大学出版会、2010)
・江沛「華北「治安強化運動」期における集合心性――1941‐1942年」
・ノーマン・スミス「満洲国の中国語文学におけるアヘン・中毒・ジェンダ」
④笹川裕史、奥村哲『銃後の中国社会――日中戦争下の総動員と農村』(岩波書店、2007)

*今後の研究会の活動について
『戦争と萬葉集』第5号(2023年2月刊行予定)を刊行して、研究会としての活動は完結する。

2020・2021
2019

【2019年度研究活動計画】

テーマ:戦争期と戦後の間、敗戦前後の〈切断=連続〉、占領期の『萬葉集』

(1)研究発表(​テーマに関わらなくともよい)

(2)レクチャー

・赤江達也氏「無教会キリスト教とナショナリズム――「歌」のコンテクスト――」(2019年9月14日(土))

(3)読書会

①赤江達也『矢内原忠雄』(岩波新書、2017)、矢内原忠雄『日本精神と平和国家』(岩波新書、1946)

②津田左右吉「建国の事情と万世一系の思想」(『古事記及び日本書紀の研究』毎日ワンズ、2018)

③太宰治「十五年間」「未帰還の友」「苦悩の年鑑」(『太宰治全集 8』ちくま文庫、1989)

2016-2018

【2016年度~2018年度活動計画】

(1)研究発表

(2)「戦争と萬葉集」データベース作成

(3)レクチャー

 戦争下における『萬葉集』を中心とする古典文学作品の受容というテーマに関わる研究者、ジャーナリスト、文学者からレクチャーを受ける機会を設け、視野を広げるとともに記録・研究のための技術を習得する。

・栗原俊雄氏「記憶を記録する」(2016年7月23日(土))

・河路由佳氏「日本統治下の台湾における日本語教育と短歌:孤蓬万里編著『台湾万葉集』の考察」(2016年9月24日(土))

・柳井貴士氏「沖縄教育史の概略と「国民」化の諸相――いくつかの文学作品を参照に」(2018年7月28日(土))

[特別トーク]ジョン・ソルト氏「平和な時代に振り返って鏡をのぞき込むと、後ろに小さく北園克衛が見える」(2019年3月22日(金))

(4)読書会

①栗原俊雄『戦艦大和 生還者たちの証言から』(岩波新書、2007)、『特攻―戦争と日本人』(中公新書、2015)

​*(2)の「戦争と萬葉集」データベース作成については、データ採取シートを作成したが、データ採取の作業にまでは至っていない。(2021年3月現在)

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